EC 2026:いま実際に何が起きているのか、商品ページは何を変えるべきか

公開日
2026年9月12日

「EC 2026」で検索すると、来年こうなるという予測がたくさん出てきます。この記事はそれをやりません。2026年はもう9月で、予測の答え合わせができる時期だからです。ここでは、公的機関とプラットフォーム自身が2025年から2026年にかけて公開した一次情報だけを並べて、そこから何が読み取れるかを考えます。数字の出どころは全部リンクしてあるので、疑わしいところはご自身で確かめてください。

先に結論を言っておくと、2026年のECで起きた一番大きな変化は「市場が伸びた」ことではありません。お客様とお店のあいだに、AIという買い物の代理人が入ってきたことです。そしてその代理人が読むのは、あなたのサイトのデザインではなく、商品データです。

在庫の段ボールに囲まれた小さな作業机で、ノートパソコンに向かって商品情報を入力している店主
2026年、商品ページを読むのはお客様だけではなくなりました。ここで入力した項目が、そのままAIの読む材料になります。

EC 2026 の市場、数字で確かめられること

まず市場そのものから。いちばん新しくて信頼できる公的データは、米国勢調査局が2026年8月18日に公表した四半期統計です。2026年第2四半期の米国EC売上は3,402億ドル、小売全体に占める割合は17.1%、前年同期比で12.2%増でした。小売全体の伸びを大きく上回っています。「ECの成長は止まった」という話をときどき聞きますが、少なくとも米国の実測値はそう言っていません。

日本はどうか。ここで正直に書いておきたいことがあります。経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」は、2026年9月時点で公表されている最新版が令和6年度調査(2025年8月26日公表)で、扱っているのは2024年のデータです。令和7年度版はまだ出ていません。

これは細かい話に見えて、けっこう大事です。「2026年の日本のEC市場は」と書いてある記事の数字は、たいてい2024年の実績か、誰かの推計です。年に1度しか出ない公的統計で1年半前を見ながら、AIが数か月単位で商習慣を変えている時期を語ることになる。だから私たちは、市場規模の話はここで止めます。伸びているかどうかより、中身が変わっているかどうかのほうが、いまは重要だと考えるからです。

買い物の入口が変わった:AIを使う人が1年で倍になった

総務省の令和8年版情報通信白書(2026年7月公表)に、はっきりした数字があります。何らかの生成AIサービスを使ったことがあると答えた個人の割合は、2025年度調査で58.8%。前年度は26.7%でした。1年で2倍以上です。テキスト生成AIに限っても24.0%から55.0%に増えています。

1年で倍になる普及率は、そうそう見ません。ただしこれは「AIを使ったことがある人」の数字であって、「AIで買い物をした人」ではありません。買い物のほうはどうか。

Adobe が自社の解析データで測っています。米国の小売サイトへの1兆件超のアクセスを分析した2025年3月の報告では、生成AI経由の流入が2024年7月から2025年2月で1,200%増えました。もとが小さいので倍率は大きく出ますが、行動の中身のほうが示唆的です。AI経由で来た人は、他の流入経路に比べて直帰率が23%低く、1訪問あたりの閲覧ページ数が12%多い。つまり、よく読んでいます。

一方で、同じ時点ではコンバージョン率は9%低いままでした。ただしこの差は、2024年7月には43%低いという水準だったところから縮んできた数字です。調査対象の買い物客がAIを何に使ったかも出ていて、下調べが55%、商品のおすすめをもらうのが47%、値引き探しが43%でした。

ここまでが事実です。ここから先は私たちが考えたことになりますが、この数字の並びは「AIはまだ買う場所ではなく、調べる場所だった」と読めます。2025年の時点では、という但し書きつきで。

2026年の本当の変化は、AIが「買える」ようになったこと

2025年から2026年にかけて起きたのは、AIが調べる道具から買う道具に変わる作業でした。しかも思いつきの新機能ではなく、業界の共通仕様として整備されています。

AIの中で購入が完結するときの流れ 4段階の流れ図。1. 販売者が構造化された商品データのフィードを渡す。2. 買い物客がAIとの会話の中で商品を探す。3. AIが販売者のエンドポイントを呼ぶ。4. 販売者が検証・配送・税・決済を行い、受諾か拒否を決める。 1 販売者 構造化された商品データを渡す(CSV / JSON のフィード) 2 買い物客 AIとの会話の中で商品を探す 3 AI 販売者のエンドポイントを呼ぶ 4 販売者 検証・配送方法・税・決済を行い、受けるか断るかを決める 販売主体は最初から最後まで販売者のまま。AIに渡すのは商品データです。
OpenAI が公開している仕様どおりの流れ。1段目が商品データで、決済まで持つのは販売者のままです。

OpenAI:Agentic Commerce Protocol

OpenAI は、ChatGPT の中で購入を完結させるための仕様を公開しています。仕組みは素っ気ないほど単純です。販売者は構造化された商品データを CSV か JSON のフィードで渡す。お客様が ChatGPT の中で探し、ChatGPT が販売者のエンドポイントを呼ぶ。検証、配送方法の判定、税の計算、決済処理は販売者側が行い、受けるか断るかも販売者が決めます。お店が販売者であることは変わりません。

Google:Universal Commerce Protocol

Google は2026年1月11日に UCP を発表しました。「デジタルコマースを統合する新しいオープン標準。Google 検索の AI モードや Gemini アプリのような AI サーフェス上で、直接その場での購入を可能にする」と説明されています。オープンソースで、AP2・A2A・MCP といった他のプロトコルとも相互運用でき、宿泊と食品の分野にも広がりつつあります。ここでも販売者は Merchant of Record(販売主体)のままです。

そして販売者が用意するものは、新しい何かではありません。「既存の Merchant Center アカウントのショッピングフィードを使って、購入意欲の高い買い物客を発見段階で捉えられる」と書かれています。つまり、いま商品フィードに入っている情報が、そのまま AI に渡る材料になります。

Shopify:どのAIにも同じ商品データで出る

同じ2026年1月11日、Shopify がUCP を Google と共同開発したことを発表しました。策定には Etsy、Wayfair、Target、Walmart が加わり、Visa、Mastercard、Best Buy、Adyen など20社以上が支持しています。Shopify の販売者は、Google の AI モードと Gemini、Microsoft Copilot、ChatGPT に、管理画面から一元的に商品を出せるようになりました。Shopify は同時に Catalog を Shopify 以外の事業者にも開放しています。

決済の話ではありません。AIチャットボットの話でもない。商品データを1回整えれば、複数のAIの会話に商品が出ていくという、配管の話です。

AIに見つけてもらう条件は、広告ではなく商品データだった

各社の仕様書には、AIに商品を扱わせるために何が要るかが具体的に書かれています。読んでみると、並んでいるのは驚くほど地味なものでした。

【事実】各仕様が求めている属性

OpenAI の商品フィード仕様では、必須項目が9つあります。商品ID、商品名、説明、URL、ブランド、販売者名、画像、在庫状況、価格です。そして任意項目のほうに size(サイズ)、material(素材)、dimensions(寸法)、weight(重量)、color(色)、condition(状態)が並びます。

任意なら要らないのか、というとそうでもありません。同じ OpenAI の解説には、「リッチメディア、レビュー、パフォーマンス指標といった推奨属性は、ランキング・関連性・ユーザーの信頼を高める」と書かれています。必須項目は売れる状態にするための最低条件で、その先の推奨属性は見つけてもらうための条件だ、という整理です。

Google 側はもっと露骨です。商品データ仕様を読むと、アパレルについてはこうなっています。

  • size(サイズ)は、日本・米国・英国・フランス・ドイツ・ブラジル向けの衣料品と靴では必須
  • color(色)は同じ国の衣料品と、色違いのある商品すべてで必須
  • material(素材)は、バリエーションの区別に関わるなら必須
  • item_group_id(商品グループID)は、同じ国のバリエーション商品で必須
  • age_group(年齢層)も同じ国の衣料品で必須

任意項目として product_detail(商品詳細)が最大100件、product_highlight(商品の要点)が2件から100件まで入れられます。仕様書の該当ページで確認できます。

さらに2026年1月11日の発表で、Google は「会話型コマース時代に発見されやすくするために設計した、数十の新しいデータ属性」を Merchant Center に追加したと書いています。例として挙げられているのが、商品への質問に対する回答と、組み合わせられるアクセサリーです。

【考察】ここから読み取れること

事実はここまで。以下は私たちの解釈です。

商品ページの情報が大事だという話は、正直これまでもずっとされてきました。ただ、それは「お客様が読むから」という理由でした。2026年に変わったのは、読み手が増えたことだと思っています。お客様が読み、そのお客様の代わりにAIが読み、そのAIが商品を出すかどうかを決めます。

そして、その決定が何を根拠にしているかが、仕様書という形で公開されてしまいました。サイズが入っていない衣料品は、日本向けの Google ショッピングでは掲載要件を満たしません。素材が空欄なら、素材で絞り込む会話には出てきません。「この商品、洗えますか」に答えるデータを持っていなければ、Google が用意した商品Q&Aの属性は埋めようがありません。

ただ、これを「AIに最適化しましょう」と読まれると困ります。属性の一覧を眺めていて引っかかったのは、どれもお客様が買う前に知りたかったことそのものだという点でした。サイズ、素材、寸法、重さ、色、何と合わせるか、よく聞かれること。AIが要求したから重要になったのではありません。お客様がずっと知りたがっていたことに、ようやく機械の読める入れ物ができた。順番としては、そちらのほうが近いはずです。

では、商品ページの何を直すのか

ここからは実務です。Mitasu を使うかどうかに関係なく、今日から手をつけられることを書きます。

1.商品説明の文章から、項目へ移す

いちばん効くのはこれです。「綿100%、モデル身長170cm、Mサイズ着用」と説明文に書いてあっても、機械にとっては1つの文字列でしかありません。素材は素材の欄、サイズはサイズの欄に入っていて初めて、フィードに乗り、絞り込みに使われ、AIが読めます。Shopify ならメタフィールド、Google に出すなら Merchant Center の該当属性です。

手間に見えますが、副産物があります。項目にすると、空欄が見えるようになります。30商品分の説明文に素材が書いていないことには誰も気づきませんが、30行の素材欄が空なのは一目でわかります。

在庫棚の前でタブレットに商品の情報を入力している小規模ストアの店主
説明文に書くか、項目に入れるか。同じ情報でも、後者だけがフィードに乗り、AIに読まれます。

2.必須属性から埋める

やることが多すぎて動けないときは、掲載要件になっているものから埋めるのが確実です。日本向けにアパレルを売るなら、サイズ、色、年齢層、バリエーションの商品グループID。この4つが揃っていないと、そもそも無料掲載の土俵に上がれません。順番に迷ったら、ここからで間違いないはずです。

3.「聞かれること」をデータにする

Google が商品Q&Aの属性を足したのは、会話の中で質問が飛んでくるからです。お問い合わせフォームとレビューを見返して、同じ質問が3回来ていたら、それは商品ページに載っていない情報です。1商品ずつ書くと終わらないので、同じ答えを共有する商品でまとめて持てる形にしておくと現実的です。

4.全商品を半端に埋めるより、数商品を完全に

これは私たちの好みかもしれません。ただ、200商品の属性が6割埋まっている状態より、主力の10商品が完全に埋まっている状態のほうが、結果を確かめやすいと思っています。効いたかどうかがわかれば、残りに広げる判断ができます。全部が半端だと、何が悪かったのかも見えません。

この「商品ページに何が足りないか」を業種ごとに片づけるために作っているのが Mitasu です。Mitasu for Apparel はサイズ表、素材、モデル着用情報、商品Q&Aを、商品説明ではなく項目として持たせて、1つの軽量ブロックで商品ページに出します。テンプレートとして作って商品に割り当てる形なので、30商品でも同じ手間で済みます。もっとも、どんな方法で入れるにしても、確かめることは同じです。お客様とAIの両方が、買う前に答えを見つけられるか。

まだ分かっていないこと

調べていて確認できなかったことも、隠さず書いておきます。

まず、日本のEC市場について2025年・2026年の公的な数字がありません。前述のとおり、経済産業省の最新公表は2024年分です。日本市場を指して「2026年は何%成長」と書いてある記事を見かけたら、その数字が何年のどの調査のものか、いちど確かめてみてください。

それから、AI経由の流入がどれだけ売上になっているかの2026年の実測値を、一次情報で確認できませんでした。本文で使った Adobe の数字は2025年3月公表のもので、当時のコンバージョン率は他経路よりまだ9%低い水準でした。その後も改善が続いているという話はあります。ただ原典に当たれなかったので、数字としては使っていません。

そして、UCP と Agentic Commerce Protocol が実際にどれだけの売上を動かしているのかは、まだ公表されていません。仕様と参加企業は確かめられます。結果はこれからです。だからこの記事は「2026年はAIコマースの年になる」とは書きません。いま書けるのは、買い物の配管が組み替えられたことと、そこに流し込むものが商品データだということ。そこまでです。

よくある質問

2026年のEC市場は成長していますか?

米国については公的な実測値があります。米国勢調査局によると、2026年第2四半期のEC売上は3,402億ドルで前年同期比12.2%増、小売全体の17.1%を占めました。日本については、経済産業省の最新の公表が2024年のデータまでなので、2026年の公的な数字はまだありません。

AIによってECの何が変わったのですか?

お客様とお店のあいだに、商品を探して購入まで進める代理人が入りました。2026年1月にGoogleがUniversal Commerce Protocolを、それ以前にOpenAIがAgentic Commerce Protocolを公開し、AIの会話の中で直接購入できる仕組みが業界標準として整備されています。どちらも販売者が商品データのフィードを渡す設計で、販売主体はお店のままです。

AIに商品を見つけてもらうには何をすればいいですか?

商品データを整えることです。OpenAIの仕様では商品ID・商品名・説明・URL・ブランド・販売者名・画像・在庫状況・価格が必須で、サイズや素材、寸法は任意属性として定義されています。Googleは日本向けの衣料品についてサイズ・色・年齢層・商品グループIDを必須としています。特別なAI対応ではなく、商品情報を説明文ではなく項目として持つことが出発点になります。

商品説明に書いてあれば十分ではないのですか?

お客様が読む分には十分ですが、機械にとっては1つの文字列です。フィードに乗せるにも、絞り込みに使うにも、AIに読ませるにも、素材は素材の欄、サイズはサイズの欄に入っている必要があります。項目にしておくと、どの商品の何が空欄かも一目でわかるようになります。

小規模なストアでも対応する必要がありますか?

必要な作業は、大手と小規模で変わりません。むしろ商品数が少ないほど、必須属性を埋めきるのは早く終わります。全商品を中途半端に埋めるより、まず主力商品を完全に仕上げて、効果を確かめてから広げるほうが現実的です。

出典: U.S. Census Bureau — Quarterly Retail E-Commerce Sales, 2nd Quarter 2026(2026年8月18日公表); 経済産業省 — 電子商取引実態調査(最新公表は令和6年度調査・2025年8月26日); 総務省 — 令和8年版 情報通信白書「個人における生成AIサービスの利用経験」(2026年7月); OpenAI — Agentic Commerce: Product Feed Spec; OpenAI — Agentic Commerce: Key concepts; Google for Developers — Universal Commerce Protocol (UCP); Google Merchant Center ヘルプ — 商品データ仕様; Google — New tech and tools for retailers to succeed in an agentic shopping era(2026年1月11日); Shopify — The agentic commerce platform(2026年1月11日); Adobe — Adobe Analytics: Traffic to U.S. Retail Websites from Generative AI Sources Jumps 1,200 Percent(2025年3月17日)。各URLは2026年9月12日に確認しました。

Mitasu Team
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Mitasuチームは、ShopifyをはじめとしたECストア運営に役立つ最新情報、商品ページ改善、顧客体験、運用効率化のヒントをお届けします。